どの都道府県でも総合事業が開始されるようになりましたが、 満足のいく総合事業の実施体制を備えている市町村はほとんど少ないと思います。
多くの市町村担当者及び介護保険サービス事業所は、総合事業自体の理解が十分でない場合が多いようです。
今回は総合事業をわかりやすく解説してくれる、動画教材などの紹介を行いたいと思います。
介護予防・日常生活支援総合事業に関する研修用動画教材
平成28年度厚生労働省老人保健健康増進等事業として、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社様が作成された「介護予防・日常生活支援総合事業に関する研修用動画教材 」が2017年6月15日に更新されました。
5分~12分程度の動画を5つのセクションに分けてホームページから提供されています。
1.総合事業・整備事業が目指す自立支援とは( 5:42) 2.自立支援型の介護予防ケアマネジメントとは(5:20) 3.総合事業・整備事業が必要となる社会的背景(4:37) 4.なじみの関係を大切にした地域づくり(11:42) 5.本人の参加意欲を重視した介護予防(8:30) |
動画は、著作物であり、著作権法に基づき保護されているものの、非営利目的の場合には、自由に利用が可能であるということなので、自己学習はもちろん、介護サービス事業所や資格団体での勉強会や、地域住民への説明会など色々と活用が出来ます。
研修用動画教材で学べる事まとめ
1.総合事業・整備事業が目指す自立支援とは( 5:42)
これまでは、骨折などで身体機能が低下した場合には、デイサービスや訪問介護といった介護保険サービスの導入が一般的であるも、これは「本人らしい暮らし」と言えるのか?
住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けると言うことは、生活で「したいこと」を「なじみ」の環境の中で続けるということを考えると介護保険サービスのみに頼るよりも、他に方法があることが考えられる。
友人と助け合って、趣味活動の先生への謝金の支払やお菓子の準備を分担したり、足腰を鍛えるために介護予防のトレーニングをしたり、ご近所の赤と一緒に買い物に行ったり民間サービスを利用して大きな重たい日用品は、宅配サービスを利用するといった組み合わせを行うことで、その人が主体的に生活できるよう支援すること、つまり、自立支援を実現する事ができます。
そうすることで趣味活動を続けたり、友人との関係も途切れずに住み慣れた地域で、暮らし続けることができるようになります。
これまでなぜそんなことができなかったのかと言うと自立支援型ケアマネジメントの機能が十分になっていなかったことと 地域の社会資源が十分に整備されていなかったからなのです。
なので、これからは、介護予防・生活支援で地域の社会資源をはぐくむ「総合事業・整備事業」が始まり、自立支援をいかすための 「介護予防ケアマネジメント」を行うために総合事業が始まったのです。
2.自立支援型の介護予防ケアマネジメントとは(5:20)
介護予防ケアマネジメントで重要なことは、意欲源を見極めることと、馴染みの関係からなるべく切り離さないということです。
意欲の源を見極めるには、「できなくなっていること」をただ補うだけではなく、「したいこと」「今できていること」が続けられるように支援する視点が重要になります。
サービスは専門職や雇用労働者が提供するデイサービスや宅配便などがあります。 そして助け合いは、地域なじみの関係で行う支え合い活動で、自然と行われる介護予防活動やゴミ捨てなどのボランティアがあります。
これまでは支援が必要になれば デイサービスやヘルパーなどの介護保険サービスを使って地域の馴染みの関係が薄れていくことが多かったのですが、 総合事業が目指す住み慣れた地域での生活は 支援が必要になった場合にご近所からゴミ捨て家簡単な生活支援の手助けを受けたり、 介護が必要な場合も見守りなど 気にかけてもらうことで安心して生活を送ることができるようになります。
3.総合事業・整備事業が必要となる社会的背景(4:37)
日本は超高齢社会に入っており団塊の世代が75歳に到達する2025年に高齢者人口は急増します。
ですが15歳から74歳までの人口はどんどん減り続けています。
75歳以上の人1人を15~74で支える割合は 2015年は5.7人 ですが、2040年には 3.3人と減少します。
負担を軽くするには75歳以上の人も介護予防を行うことと、支える側の人材の有効活用を行うことが必要になります。
つまり介護予防・日常生活支援総合事業は、介護予防で高齢者をできる限り元気な状態で維持し 、地域の担い手となって 日常生活の支援をしていくことが目的となっています。
4.なじみの関係を大切にした地域づくり(11:42)
総合事業整備事業は地域の多様な資源を把握し育むことが必要です。
地域の多様な資源と言ってもご近所の馴染みの関係から行われる「助け合い」や、実際の介護などの専門職が行う「サービス」があります。
その中で総合事業で必要なのは新たにサービスを作るのではなく、既にある資源を見つけることです。
サービスについては、関係機関がまとまった情報を持っているため、地域包括支援センターなどの関係機関から情報収集を行うことが中心となります。
一方助け合いは地域に通い住民の声を聞くことでしか情報が得られないのでこまめに地域に足を運ぶ必要があります。コツは地域の物知り住民を見つけることです。
地域の助け合いをはぐくむには、 行政が一方的にサービスを決めてはいけません。
まずは、住民がつながり、関係が出来て、地域課題に気付き、助け合い活動が生まれるようになります。
行政は、住民がつながって関係ができている所へ地域の状況を伝えて、地域課題の気付きを生むための土壌作りを行います。
また、地域住民がやる気になって助け合い活動が生まれるときには、全力応援の支援を行います。
それらの活動を地域に発信しつたえることで、新たな助け合い活動が生まれるという好循環になります。
そして、土壌作りと全力応援の間には、行政は住民がやる気になるまでとにかく待つことが必要になります。
理由は、行政から振ってきた仕事となり、長続きしなくなるので、「やりたいからやる」という住民主体の原則を貫くことが重要です。
【活動例】
土壌づくり:勉強会型、リーダー育成型、集いの場型
→地域課題について話し合うようになってきたら「協議体」へ。
※ポイントは間口を広げること。子育てが落ち着いた人や定年退職した人など、これまで行政がアプローチしていなかったところを考える。
全力応援:場所・備品の手配、専門職の派遣、広報支援、担い手同士をつなぐ
・必要な支援はお金とは限らない
・総合事業も活用できる
・支援の方法は、住民の意向を尊重して検討
第2層生活支援コーディネーターが担う2つの支援
1つは全力応援。そしてもう一つは住民で対応できないようなケースに対する支援(活動の困りごと支援)で、行政や地域包括支援センターと連携して丁寧に対応しましょう。
生活支援コーディネーターは、地域の話し合いの場で住民の関心や地域課題に対する認識を把握したり、地域ケア個別会議に参加して自立支援に必要な資源の情報を収集する必要があります。
生活支援コーディネーターの活動が定着するまでは自治体が中心となって、バックアップを行う必要があります。
5.本人の参加意欲を重視した介護予防(8:30)
介護保険制度では平成18年度から介護予防事業を開始しました。ですが、教室を開催しても参加者が集まらなかったり、教室終了後には介護予防活動をやめてしまうという事で長続きしませんでした。
それらのことから課題は①参加意欲の引き出し②介護予防の効果の継続であるといわれています。
総合事業では、地域活動やボランティア、就労、趣味、スポーツなどの一条生活を活動的にする通いの場を充実させる事で、高齢者の社会参加促進による介護予防につなげようという取り組みを行います。
誰でも、誰とでも参加できる興味や関心に応じた多様な通いの場があれば参加意欲を引き出すことができます。
また、 身近な地域で通えるものであれば、介護予防の効果の継続も期待できます。
通いの場作りには2つの効果がある
①行政が把握できない地域課題の発見
②助け合い活動への発展
このような通いの場に通う事が難しい方は、専門職による機能回復を受けることで、短期間で機能を回復し地域の通いの場に戻る事ができるようになります。
これを総合事業では、訪問型・通所型サービスCと呼んでいます。
また、地域の通いの場は、従前にあるものも良いですし、地域介護予防活動支援事業や通所型サービス(従前相当・A・B)といったものでも良いでしょう。
これを実現するためには介護予防ケアマネジメントの考え方を共有しておく事が重要になります。
実践例として、体操サークルの紹介
特徴: 介護予防効果の高いプログラム、 住民による自主的な実施
ポイント:① 自力で歩けるようになる体操
② 体が弱っても続けられる体操
③ 週1回以上の開催を原則とした体操
④ 歩いて行ける範囲で開催する体操
住民による自主的な実施には4つの段階がある。
ステージ1:設計段階
ステージ2:提案段階
ステージ3:立上支援
ステージ4:実施段階
新たに立ち上げずとも、趣味の集いやサークル、サロンなど既存の通いの場を活用する方法もあるが、2つの事を気をつけないといけない。
注意1:体操をやってください、週1回以上開催してくださいと押し付けて住民のモチベーションを下げない事が重要
注意2:期待する効果を踏まえて支援内容を調整する。その為に、定期的にモニタリングを行う
参考資料
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