身寄りのない高齢者の支援は、これからの地域福祉において避けて通れない大きなテーマです。
家族や親族が担ってきた日常生活の支援、入院や入所の手続き、亡くなった後の事務手続きなどを、誰がどこまで担うのか。
この問題は、すでに多くの地域で現場の大きな負担になっています。
今回は、社会福祉法などの一部を改正する法律案の中で示されている、身寄りのない高齢者などへの支援に関する新しい事業について整理します。
制度の方向性としては必要なものだと思います。
しかし同時に、判断能力、利用料、社協の人手不足、地域住民への丸投げといった大きな課題も見えてきます。
この記事では、制度の概要、成年後見制度との違い、現場で起こり得る矛盾、そして制度を本当に機能させるために必要なことをお伝えします。
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- 身寄りのない高齢者支援の新事業とは
- 対象となるのは頼れる身寄りがない高齢者など
- 事業内容は大きく3つに分かれます
- 日常生活支援の内容
- 入院・入所などの手続き支援
- 死後事務支援の内容
- 実施主体は社協だけではありません
- 2027年4月施行予定とされています
- 成年後見制度との違い
- 本人が契約できる判断能力が必要です
- 財産管理の権限も成年後見とは違います
- 費用負担の考え方も違います
- 本当に困っている人ほど制度にアクセスできない懸念
- 成年後見制度と民間サービスの間を埋める制度
- 社協はすでに人手不足です
- 財源の裏付けがなければ制度は機能しません
- 制度を機能させるために必要な4つのこと
- 地域住民への丸投げにならないか
- 国から市町村、市町村から社協、社協から地域へ
- 方向性は正しいが、矛盾も大きい
- 現場が安心して実務に集中できる環境が必要です
- あなたの地域では誰が担っていますか
- AIを活用すれば制度理解と資料作成は大きく効率化できます
- 公式LINEで無料プレゼントを受け取れます
- まとめ
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身寄りのない高齢者支援の新事業とは
今回の改正案で示されている身寄りのない高齢者などへの支援は、「福祉サービス、保健医療サービス等利用援助事業」という名称で整理されています。
これは、厚生労働省の社会福祉法などの一部を改正する法律案の概要の中に示されているものです。
背景にある課題は、家族や親族がこれまで担ってきた支援を、担える人がいなくなっていることです。
日常生活の支援、入院や入所の手続き、死後事務への対応などが、本人の生活上の大きな課題になっています。
また、資力が十分にない方でも利用できる事業が求められています。
さらに、成年後見制度だけでは拾いきれない権利擁護支援を、総合的に充実させていく必要があります。
そのために、利用者のうち一定割合以上に無料または低額の料金で提供する事業を、第2種社会福祉事業に位置づける方向が示されています。
対象となるのは頼れる身寄りがない高齢者など
今回の新事業の主な対象者は、頼れる身寄りがいない高齢者などです。
さらに、判断能力が不十分な方も対象として想定されています。
ただし、ここで重要なのは、成年後見制度のように家庭裁判所の審判によって代理権を持つ支援ではないということです。
あくまで本人との契約を前提とした支援になります。
そのため、本人にまったく契約能力がない場合には、この新事業だけで対応することは難しくなる可能性があります。
つまり、判断能力が不十分で支援が必要な方を対象にしながらも、契約できるだけの判断能力は必要になるという、非常に微妙なラインに立つ制度だと考えられます。
事業内容は大きく3つに分かれます
この新事業の内容は、大きく3つに分かれます。
1つ目は、日常生活支援です。
2つ目は、入院や入所などの手続き支援です。
3つ目は、死後事務支援です。
どれも、これまで家族や親族が担ってきた役割に近いものです。
そして、現場で実際に担うとなると、かなり責任の重い支援になります。
単なる見守りや声かけではなく、本人の生活、医療、福祉、財産、死後の手続きに関わる内容が含まれるためです。
日常生活支援の内容
日常生活支援には、定期的な見守りが含まれます。
また、日常的な金銭管理、福祉サービスの利用援助、重要書類の預かりなども想定されています。
この内容を見ると、かなり重たい支援であることが分かります。
定期的な見守りだけであれば、地域の支え合いでも一定程度対応できるかもしれません。
しかし、金銭管理や重要書類の預かりが入ってくると、責任の重さは一気に増します。
本人の財産や権利に関わる支援だからです。
どこまで預かるのか。
誰が管理するのか。
トラブルが起きたときに誰が責任を負うのか。
こうした運用ルールが明確でなければ、実施主体に大きな負担がかかることになります。
入院・入所などの手続き支援
2つ目は、入院や入所などの手続き支援です。
ここには、入院や入所手続きへの同行、緊急連絡先の提供、入院費用の支払い代行、退院や退所時の支援などが含まれます。
これも非常に責任の重い支援です。
医療機関や施設では、緊急連絡先や身元保証、支払いに関する確認が求められる場面があります。
制度上は、身元保証人がいないことだけを理由に入院や入所を拒否してはならないとされる場面もあります。
しかし、現実の現場では、緊急連絡先や支払い、亡くなった場合の対応などが大きな問題になります。
この新事業がその隙間をどこまで担うのか。
連帯保証のような責任まで求められるのか。
その線引きが曖昧なままだと、実施主体にとっては非常に重たい事業になります。
死後事務支援の内容
3つ目は、死後事務支援です。
ここには、葬儀や納骨の手続き支援、家財処分の支援、行政への届出、公共料金の解約手続きなどが含まれます。
亡くなった後の手続きまで支援するということは、本人が生きている間だけでなく、死後の生活整理まで関わるということです。
これは、身寄りのない方の支援では本当に必要な領域です。
しかし、同時に責任も非常に重くなります。
葬儀や納骨をどうするのか。
家財を誰が確認し、どう処分するのか。
貴重品や重要書類が出てきた場合にどう扱うのか。
相続人が後から出てきた場合にどうするのか。
こうした点について、明確なルールがなければ、現場は大きなリスクを抱えることになります。
実施主体は社協だけではありません
この新事業は、日常生活支援に加えて、入院・入所などの手続き支援、または死後事務支援の少なくとも一方を実施することが想定されています。
また、実施主体は社会福祉協議会だけに限定されているわけではありません。
社会福祉法人やNPO法人なども実施できる形になるとされています。
この点は、地域の多様な主体が関われるという意味では可能性があります。
しかし、裏を返せば、誰が担うのかが地域によって大きく変わる可能性もあります。
社協が担う地域もあれば、社会福祉法人が担う地域もある。
NPOが担う地域もあるかもしれません。
一方で、担い手が見つからない地域も出てくる可能性があります。
2027年4月施行予定とされています
この改正案は、2027年4月の施行が予定されています。
今後、国会での審議や具体的な省令、通知、ガイドラインなどによって、運用の詳細が示されていくことになると思われます。
そのため、現時点ではまだ不明確な部分もあります。
ただし、制度の方向性として、身寄りのない高齢者への支援を社会福祉事業として位置づけようとしていることは重要です。
現場としては、制度の詳細が出てから考えるのではなく、今のうちから自分の地域では誰がどこまで担えるのかを考えておく必要があります。
成年後見制度との違い
現場の方が気になるのは、成年後見制度との違いだと思います。
この新事業は、成年後見制度の代わりではありません。
むしろ、成年後見制度の外側や手前を支える仕組みと考えた方がよいと思います。
成年後見制度は、家庭裁判所の審判によって開始されます。
成年後見人などには、本人の財産管理や法律行為に関する代理権が与えられる場合があります。
一方で、この新事業は、社会福祉法の改正によって第2種社会福祉事業に位置づけられる事業です。
家庭裁判所が関与して代理権を与える仕組みではありません。
そのため、支援の性質や権限が大きく異なります。
本人が契約できる判断能力が必要です
成年後見制度では、後見人などが本人に代わって契約や財産管理を行うことがあります。
しかし、この新事業では、あくまで本人が契約することが前提になります。
つまり、本人に契約内容を理解し、契約した結果を認識し、判断できる能力が必要になります。
ここが非常に難しいところです。
この事業を利用したい方は、判断能力が低下している可能性があります。
しかし、契約できるだけの判断能力は必要です。
判断能力が不十分だけれど、契約まではできる。
この絶妙なラインを、誰がどのように判断するのか。
実施主体にとっても、非常に難しい判断になると思います。
財産管理の権限も成年後見とは違います
成年後見制度では、成年後見人などが家庭裁判所の監督のもとで財産管理の権限を持ちます。
一方で、この新事業では、日常的な金銭管理の援助は想定されていますが、成年後見制度のような代理権を持つわけではありません。
つまり、本人に代わって広く法律行為を行う制度ではありません。
あくまで、本人の契約に基づいて、日常生活上の支援や金銭管理の援助を行うものです。
そのため、どこまで支援できるのか、どこから成年後見制度につなぐべきなのかという線引きが重要になります。
この線引きが曖昧なままだと、現場では判断に迷う場面が増えると思います。
費用負担の考え方も違います
成年後見制度では、成年後見人などへの報酬は家庭裁判所が決定します。
本人の資力に応じて、報酬助成などの公費負担が使われる場合もあります。
一方で、この新事業は、原則として本人の利用料負担が前提になります。
ただし、資力が乏しい方については、無料または低額の仕組みを整える方向が示されています。
ここで問題になるのは、その差額を誰が負担するのかという点です。
無料や低額で提供する場合、実施主体の人件費や事務負担をどう支えるのか。
財源の裏付けが不明確なままでは、制度としてはあっても現場で動かない可能性があります。
本当に困っている人ほど制度にアクセスできない懸念
この新事業には、大きな矛盾があります。
それは、本当に困っている人ほど制度にアクセスできない可能性があるということです。
まず、契約できる判断能力が必要です。
しかし、本当に支援が必要な方ほど、判断能力が低下していることがあります。
次に、原則として利用料を払える資力が必要です。
しかし、本当に支援が必要な方ほど、経済的に厳しいこともあります。
さらに、制度にたどり着く力も必要です。
しかし、本当に支援が必要な方ほど、相談先が分からず、制度につながる力も弱くなっていることがあります。
判断能力、支払い能力、制度にアクセスする力。
この3つが弱い人ほど、本来は支援が必要です。
しかし、その人たちが制度の隙間に落ちてしまう可能性があります。
成年後見制度と民間サービスの間を埋める制度
この新事業は、成年後見制度では拾いにくい人と、民間の身元保証サービスを利用できる人の間を埋める制度だと考えられます。
成年後見制度を使うほど判断能力が低下しているわけではない。
しかし、頼れる身寄りがいない。
民間の身元保証サービスを使えるほどの資力もない。
このような方々を支える仕組みとしては、非常に重要です。
ただし、そのような方々を支えるには、重たい責任が発生します。
日常生活、入院・入所、死後事務まで関わるのであれば、現場には相当な負担がかかります。
その責任に見合う財源や人員配置がなければ、実施主体は受けたがらない可能性があります。
社協はすでに人手不足です
この事業について、国は社会福祉協議会に大きな期待をしているのではないかと感じます。
しかし、現行の日常生活自立支援事業でさえ、社協はすでに人手不足です。
令和6年度の日常生活自立支援事業利用状況調査では、専門員が不足していると回答した社協が37.3%とされています。
また、生活支援員が不足していると回答した社協は49.4%とされています。
さらに、待機者が発生している社協も約12%あるとされています。
このような状況の中で、新しい重たい事業を「お願いします」と言われても、それだけで制度が動くとは思えません。
現場に必要なのは、使命感だけではありません。
人と財源です。
財源の裏付けがなければ制度は機能しません
この新事業を本当に機能させるには、安定した財源が必要です。
利用料を低く抑える場合、実施主体が持ちません。
逆に、利用料を高くすれば、本当に困っている人が使えません。
資力の乏しい方に無料または低額で提供するのであれば、その差額を誰が負担するのかを明確にする必要があります。
国や市町村による財政措置が曖昧なままでは、地域差が拡大していきます。
結果として、実施できる地域とできない地域が生まれ、担い手も疲弊していく可能性があります。
制度としては正しい方向でも、財源がなければ絵に描いた餅になってしまいます。
制度を機能させるために必要な4つのこと
この新事業を本当に機能させるためには、4つのものが必要だと思います。
1つ目は、お金です。
国による安定した財源がなければ、市町村や社協任せになり、地域差が拡大していきます。
2つ目は、人です。
この業務に見合う人件費と体制整備費が必要です。
使命感だけに頼る仕組みでは続きません。
3つ目は、ルールです。
契約書、利用料、預金管理の方法、死後事務、成年後見制度への接続基準など、標準的な運用ルールが必要です。
4つ目は、線引きです。
どこまでこの新事業で対応し、どこから成年後見制度や他の制度につなぐのか。
この線引きがなければ、現場は過大な責任を背負うことになります。
地域住民への丸投げにならないか
今回の資料の中で、特に気になる表現があります。
地域住民が生活支援員として意思決定支援をしながら、尊厳ある本人らしい生活の安定を図る仕組みとして機能するという内容です。
この考え方自体は大切です。
地域住民が関わり、本人らしい暮らしを支えることは、地域福祉の大切な方向性です。
しかし、現実の地域住民はどうでしょうか。
地域住民自身も高齢化しています。
60歳以上の方でも、定年後も働いている方が増えています。
ボランティアで何でも担える時代ではありません。
その中で、重たい責任を地域住民に丸投げするような形になれば、仕組みは機能しない可能性があります。
国から市町村、市町村から社協、社協から地域へ
私が懸念しているのは、責任が下へ下へと流れていくことです。
国が市町村に丸投げする。
市町村が社協などに丸投げする。
社協などが地域住民に丸投げする。
その結果、誰も十分に支えきれず、制度は形だけになってしまう。
地域住民向けのボランティア養成イベントだけは開催される。
しかし、その後の実際の活動にはつながらない。
このようなことが、地域によっては繰り返されてしまう可能性があります。
制度を作るのであれば、現場が本当に動ける体制まで整える必要があります。
方向性は正しいが、矛盾も大きい
今回の新事業の方向性自体は、私は正しいと思います。
家族に頼れない人が増える中で、日常生活、入院、死後事務を支える仕組みは必ず必要です。
これまで家族が担ってきた役割を、社会でどう支えるのか。
この問いに向き合うことは避けられません。
しかし、制度には大きな矛盾もあります。
契約には判断能力が必要です。
利用料は本人負担が前提です。
本当に困っている人ほど、判断能力も支払い能力も制度につながる力も弱い可能性があります。
さらに、社協はすでに人手不足です。
財源の裏付けなく「お願いします」だけでは、制度は機能しないと思います。
現場が安心して実務に集中できる環境が必要です
この制度を本当に機能させるためには、国が財源、人員配置支援、標準ルール、現場を守る線引きを示す必要があります。
そして、市町村がその体制をきちんと整備する必要があります。
現場の人が安心して実務に集中できる環境がなければ、制度は動きません。
身寄りのない方の支援は、簡単な支援ではありません。
生活、医療、福祉、財産、死後事務まで関わる、非常に重たい支援です。
だからこそ、善意や使命感だけで支えるのではなく、制度として責任を持って支える体制が必要です。
あなたの地域では誰が担っていますか
あなたの地域では、身寄りのない方の支援を誰が担っているでしょうか。
地域包括支援センターでしょうか。
社会福祉協議会でしょうか。
ケアマネジャーでしょうか。
病院や施設の相談員でしょうか。
行政でしょうか。
それとも、現場の誰かが責任感で何とか対応しているのでしょうか。
この新事業が始まったとき、あなたの市町村ではどうなると思いますか。
ぜひ、地域の現状を考えるきっかけにしていただければと思います。
AIを活用すれば制度理解と資料作成は大きく効率化できます
今回のような制度改正の内容を整理するには、これまでならかなりの時間がかかっていました。
しかし、AIを活用すれば、制度資料の整理、スライド作成、要点の抽出、現場向けの説明資料づくりを大きく効率化できます。
今回使用したスライドも、AIを活用しておおよそ20分ほどで作成し、その後内容の検証を行いました。
収録を含めても、短時間で動画と資料の準備を行うことができました。
AIは資料を作るだけではありません。
日々の相談業務、事業計画づくり、支援経過の整理、会議資料の作成などにも活用できます。
人手不足の現場だからこそ、AIで効率化できる部分は積極的に活用し、人が人に向き合う時間を守る必要があります。
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まとめ
今回の改正案では、身寄りのない高齢者などを支える新しい事業として、「福祉サービス、保健医療サービス等利用援助事業」が示されています。
日常生活支援、入院・入所などの手続き支援、死後事務支援を含む内容であり、第2種社会福祉事業として位置づけられる方向です。
方向性としては、家族に頼れない方が増える中で必要な仕組みだと思います。
しかし、本人が契約できる判断能力を持っている必要があること、利用料負担が前提であること、社協などの実施主体がすでに人手不足であることなど、大きな課題もあります。
本当に困っている人ほど、判断能力、支払い能力、制度につながる力が弱い可能性があります。
その人たちが制度の隙間に落ちないようにするには、国による安定した財源、低所得者への公費負担、人員配置支援、標準的な運用ルール、成年後見制度との接続基準などが必要です。
また、地域住民や社協に責任を丸投げするのではなく、現場が安心して実務に集中できる体制整備が欠かせません。
身寄りのない方の支援は、これからの地域福祉にとって避けられない課題です。
制度の方向性を正しく理解しながら、自分の地域では誰がどこまで担うのか、今のうちから考えていくことが大切です。


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