社協・ケアマネ・包括さん 。生活困窮と生きづらさを立て直す3ステップ

ケアマネジャー

生活困窮があり、さらに生きづらさも抱えている方の支援は、現場の支援者にとってとても悩みやすいテーマです。

お金の問題だけなら、生活保護や日常生活自立支援事業など、制度につなぐ見立てが立てやすいかもしれません。

しかし、そこに孤独感、自尊心の低下、人への不信感、心のしんどさが重なっていると、「何から手をつけたらいいのか分からない」と感じることがあります。

地域包括支援センターや社会福祉協議会、ケアマネジャー、相談支援の現場では、このようなケースに向き合う場面が少なくありません。

この記事では、生活困窮と生きづらさを抱えた方への支援を、どのように立て直していくのか、3つのステップで整理していきます。

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生活困窮と生きづらさが重なると支援は複雑になります

生活困窮があり、さらに生きづらさもある方の支援では、支援者の頭の中が混乱しやすくなります。

たとえば、お金の問題があるなら、専門機関に相談すればよいと考えることができます。

生活保護の相談、日常生活自立支援事業、家計改善支援など、制度につなぐ方法はあります。

しかし、その方が同時に心の孤独や生きづらさを抱えている場合、話は一気に難しくなります。

診療内科につなげればよいのか。地域の居場所につなげればよいのか。そもそも本人が人を信用していない場合、どう関係を作ればよいのか。

支援者自身も、「どこから関わればいいのか」「どの言葉を使えばいいのか」「何を聞いたら傷つけてしまうのか」と悩んでしまいます。

その結果、課題が頭の中で絡まった糸のようになり、解決の見立てが立てにくくなります。

急ぐべきは解決ではなく、支援の糸ほぐしです

このようなケースで大切なのは、最初から一気に解決しようとしないことです。

急ぐべきは解決ではなく、支援者側の頭の中を整理することです。

生活困窮もある。生きづらさもある。人との関係も難しい。本人が心を閉ざしている。制度につながっていない。

これらを一つの大きな問題として抱えてしまうと、支援者も本人も苦しくなります。

だからこそ、課題を分けて考える必要があります。

今回のようなケースでは、課題を大きく3つに分けて考えます。

1つ目は、生活困窮や金銭的な問題を制度で守ることです。

2つ目は、生きづらさや自尊心の低下を、居場所や継続的な関係で支えることです。

3つ目は、支援者自身の関わり方やコミュニケーションを整えることです。

この3つに分けて、一つずつ見立てを立てていくことで、絡まった糸は少しずつほどけていきます。

ステップ1 生活困窮は制度で守る

まず最初に行うべきことは、生活の崩壊を防ぐことです。

生活困窮や金銭的な問題は、本人の気持ちや努力だけで解決させようとしてはいけません。

ここは、制度や支援資源につなぐことが必要です。

たとえば、社会福祉協議会の日常生活自立支援事業、生活保護の相談、家計改善支援、生活困窮者自立支援制度など、本人の状況に応じて活用できる制度を確認します。

大切なのは、支援者が一人で何とかしようとするのではなく、きちんと制度の担当者につなぎ、暮らしの土台を整えていくことです。

お金の不安が強い状態では、本人は将来のことを考える余裕を持ちにくくなります。

今日の生活が不安定なまま、「これからどうしたいですか」と聞かれても、答えられないのは当然です。

だからこそ、まずは生活の土台を崩さないことが最優先です。

制度につなぐことは支援の丸投げではありません

生活困窮の支援では、制度につなぐことがとても大切です。

ただし、制度につないだから支援が終わるわけではありません。

制度は生活の土台を守るために必要ですが、その方が抱えている生きづらさや孤独感まで、制度だけで解決できるとは限りません。

たとえば、生活保護につながって金銭的な不安が少し減ったとしても、人を信用できない気持ちや、自分には価値がないと感じる気持ちが残っていれば、生活はまた不安定になる可能性があります。

借金を繰り返したり、支援者との関係が切れたり、社会とのつながりを失ったままになったりすることもあります。

そのため、制度につなぐことは大切ですが、それだけで完了と考えないことが重要です。

ステップ2 生きづらさは居場所とフィードバックで支える

次に考えたいのが、本人の生きづらさへの支援です。

本人が心を閉ざしている場合、その背景には自尊心の低下があることが少なくありません。

これまで何度も否定されたり、失敗体験を重ねたり、人を信じて傷ついたりしていると、支援者の言葉も簡単には届きません。

そのような方に対して、「もっと頑張りましょう」「外に出ましょう」「相談しましょう」と言っても、本人の心には入っていかないことがあります。

生きづらさは、本人一人の努力だけで解決できるものではありません。

必要なのは、本人が少しずつ自分を取り戻せるような居場所と、継続的な関係です。

自尊心の回復にはセルフケアと居場所の両方が必要です

自尊心を回復するためには、まず本人自身が小さなセルフケアを積み重ねることが大切です。

ただし、ここでいうセルフケアは、大きな目標を達成することではありません。

たとえば、一歩だけ散歩をしてみる。

毎日少しだけ日記をつけてみる。

家計簿をつけてみる。

朝起きた時間を記録してみる。

そのような小さな行動で十分です。

何もしないまま、今日と明日の不安に怯える毎日から、ほんの少しだけ自分でできることを増やしていく。

その積み重ねが、本人の自尊心の回復につながっていきます。

ただし、セルフケアを本人だけに任せてはいけません。

小さな努力に対して、「よく続けましたね」「そこまでできたのはすごいですね」「昨日より少し前に進みましたね」とフィードバックしてくれる人や場所が必要です。

このフィードバックを受けられる環境こそが、本人にとっての居場所になります。

居場所はサービス事業所でも地域の通いの場でもよい

居場所というと、特別な場所をイメージするかもしれません。

しかし、必ずしも新しい支援機関を作る必要はありません。

サービス事業所でもよいですし、地域にある通いの場でもよいです。

サロン、体操教室、趣味活動、ボランティアの場、相談できる窓口、気にかけてくれる専門職との関係など、本人に合った場所であればよいのです。

大切なのは、本人が無理なく関われることです。

人が多すぎる場所がしんどい人もいます。

にぎやかな場所より、一人で落ち着ける時間を大切にしたい人もいます。

その方にとって、「少し楽にいられる場所」「少し安心できる関係」を見つけていくことが大切です。

本人の小さなセルフケアと、それを認めてくれる居場所が重なることで、生きづらさは少しずつ軽くなっていきます。

ステップ3 支援者自身の関わり方を整える

3つ目のステップは、支援者自身の関わり方を整えることです。

生活困窮や生きづらさを抱えている方への支援では、制度や居場所だけでなく、支援者の言葉のかけ方も非常に重要です。

特に、本人が心を閉ざしている場合、いきなり「今後、何をしたいですか」と聞いても、答えが返ってこないことがあります。

これは本人に意欲がないからではありません。

何をしたいかを考える余裕がない場合もありますし、自分の希望を言ってもよいと思えていない場合もあります。

そもそも、人は「何をしたいですか」と聞かれて、すぐに答えられるとは限りません。

支援者自身も、突然そう聞かれたら、すぐに立派な答えが出るでしょうか。

仕事で疲れているときなら、「家でのんびりしたい」「テレビを見たい」「何も考えたくない」と感じることもあるはずです。

でも、それを支援者に正直に言えるかというと、言いにくいものです。

だからこそ、「何をしたいですか」から入るのではなく、「どうありたいですか」という心の状態から探ることが大切です。

何をしたいかより、どんな時に少し楽かを聞く

本人が心の壁を作っているときには、「心地よいですか」と聞くことさえ、少し難しい場合があります。

そのようなときは、もっとやわらかく聞いてみます。

たとえば、「どのような時間だと少し楽ですか」と聞いてみるのです。

この聞き方であれば、本人も答えやすくなります。

「一人で散歩しているときは落ち着きます」

「人混みはしんどいです」

「庭の花を見ていると、少し気持ちが楽になります」

そのような言葉が出てくるかもしれません。

そこから、「では、落ち着ける場所をどう増やしていくか、一緒に考えてみましょうか」と関わることができます。

このように、本人が心地よさや安心を感じる場面を一緒に探していくことで、心の本質に少しずつ近づくことができます。

心地よさから本人の希望を見つけていく

本人の希望は、いきなり大きな目標として出てくるとは限りません。

むしろ、最初は小さな心地よさの中に隠れていることがあります。

たとえば、「春になって花が咲いているのを見ると、少し心地よい」と話してくれたとします。

その言葉の中には、外に出ること、季節を感じること、新しい命に気づくこと、何かが始まる感覚を持つことなど、その人にとって大切なものが含まれているかもしれません。

支援者は、その言葉を受け止めながら、「春の風を感じたり、花を見ることで、少し気持ちが軽くなる感じがあるんですね」と確認していきます。

このような会話を重ねることで、「何をしたいか」よりも深いところにある、「どうありたいか」が見えてきます。

これが、心の状態に寄り添った支援です。

NGな関わり方は制度だけで解決しようとすること

生活困窮と生きづらさを抱えた方への支援には、注意したい落とし穴があります。

1つ目の落とし穴は、生きづらさの心を制度だけで解決しようとすることです。

金銭的な問題がある場合、制度につなぐことはとても大切です。

しかし、生活保護につながったから、日常生活自立支援事業につながったから、それで本人の生きづらさが解決するわけではありません。

生活困窮に至った背景には、孤独、人間関係の傷つき、自信のなさ、社会とのつながりの薄さなどがある場合があります。

そこを見ないまま制度だけに丸投げしてしまうと、根本の課題が残ったままになります。

その結果、再び借金をしてしまったり、支援につながらなくなったり、生活がまた不安定になることがあります。

制度は土台を守るものです。

しかし、心の回復には、別の支援も必要です。

もう一つのNGは本人の努力だけに任せること

2つ目の落とし穴は、心のしんどさを本人の努力だけに任せることです。

生活困窮や生きづらさを抱えている方は、すでにいっぱいいっぱいの状態であることが少なくありません。

他人を信用できない状態になっている方もいます。

そのような方に、「頑張ってください」「自分で努力してください」と伝えても、本人はさらに追い詰められてしまうことがあります。

必要なのは、努力を押しつけることではありません。

本人ができそうな小さなセルフケアを一緒に見つけることです。

そして、その小さな行動に対して、定期的にフィードバックを行うことです。

「できたこと」を一緒に確認し、本人が少しずつ自分を信じ直せるように支えることが大切です。

制度の安心と関係性の安心を両輪にする

生活困窮と生きづらさを抱えた方への支援では、制度の安心と関係性の安心の両方が必要です。

制度の安心とは、生活保護や日常生活自立支援事業などによって、暮らしの土台を守ることです。

関係性の安心とは、本人の小さな努力を見守り、フィードバックし、安心して話せる人や場所があることです。

この2つがそろって、はじめて支援が安定していきます。

制度だけでは心が置き去りになることがあります。

気持ちに寄り添うだけでは、生活の土台が崩れてしまうことがあります。

だからこそ、制度と居場所、そして支援者の関わり方を組み合わせていくことが大切です。

心のケアマネジメントという視点

生活困窮と生きづらさを抱えた方への支援では、心のケアマネジメントという視点が重要になります。

これは、単に本人の気持ちを聞くだけではありません。

本人がどのような時に少し楽になるのか。

どのような場面で安心できるのか。

どのような関係なら、少しだけ心を開けるのか。

そうした心の状態を丁寧に見立てながら、制度、居場所、セルフケア、関係性を組み合わせていく考え方です。

支援者がこの視点を持つことで、本人への関わり方は大きく変わります。

「何をしたいですか」と聞いて答えが出ないから終わりではなく、「どんな時間なら少し楽ですか」と、心の入口を探していくことができます。

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支援者が手応えを感じられないときに見直したいこと

生活困窮や生きづらさを抱えている方の支援で、まったく手応えを感じられないことがあります。

何度関わっても話が進まない。

制度につないでも生活が安定しない。

本人が心を開いてくれない。

そのようなときは、支援者自身を責める必要はありません。

ただ、支援の組み立てを見直してみることは大切です。

制度に丸投げしていないか。

本人の努力だけに任せていないか。

本人が安心できる居場所やフィードバックの機会があるか。

「何をしたいですか」だけを聞いて、本人が答えられない状態になっていないか。

こうした視点で見直すと、次の一手が見えてくることがあります。

生活困窮と生きづらさの支援は3つに分けて考える

今回の支援のポイントは、生活困窮と生きづらさを一つの大きな問題として抱え込まないことです。

まず、生活困窮は制度で守る。

次に、生きづらさは本人のセルフケアと居場所で支える。

そして、コミュニケーションの難しさは、支援者自身の関わり方を整える。

この3つに分けて考えることで、支援の見立てはかなり整理しやすくなります。

本人の課題をすべて本人の責任にしない。

支援者だけで抱え込まない。

制度だけに任せきりにしない。

このバランスが、生活困窮と生きづらさを抱えた方への支援ではとても大切です。

まとめ

生活困窮があり、生きづらさも抱えている方への支援では、課題が複雑に絡み合いやすくなります。

お金の問題、心のしんどさ、人への不信感、孤独、居場所のなさ、支援者との関係づくりなど、考えるべきことが多くあります。

だからこそ、まずは支援の糸をほぐすことが大切です。

生活困窮は、制度や支援資源につないで暮らしの土台を守ります。

生きづらさは、本人の小さなセルフケアと、それを受け止めてくれる居場所や関係性で支えます。

そして、コミュニケーションの難しさについては、「何をしたいですか」ではなく、「どのような時間だと少し楽ですか」と、心の状態から丁寧に探っていきます。

制度の安心と、関係性の安心。

この2つを両輪にして支援を組み立てることで、本人の生活は少しずつ立て直しやすくなります。

支援者の方が、今まさに悩んでいるケースに向き合うとき、この記事が少しでも整理の助けになれば幸いです。

そして、今苦しんでいる方の上に、少しずつ光が差し込むような支援が実現することを心から願っています。

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