介護・福祉業界で働く人の中で、「会議」に苦手意識を持っている人は多いのではないでしょうか?
・会議の参加者から、批判的な意見を言われたり攻撃されると考えたら、怖い。
・会議の進行を上手く行う自信がない。
・会議をしながら、要点をまとめた板書をすることができない。(ホワイトボードの前で固まってしまう)
など、会議を主催する立場になった時には、大きな不安が両肩にのしかかっていませんか?
今回は、そのような会議に苦手意識を持っている人のために、会議・板書・ファシリテーションの基本について解説を行いたいと思います。
動画解説
会議・板書・ファシリテーションの基本 解説
会議・板書・ファシリテーションの基本は、7つのステップ通りに行えば、ほとんどの会議は失敗しない構成となっています。
①事前に会議の議題・目的を書く
➁要点をピックアップし、キーワードを書き出す
➂板書の内容が合っているか、確認を行う(合意形成・補足)
➃板書を行う際に、キーワードから話が発展する場合は、記号を活用する
⑤話が長く、まとまらない参加者には「では、まとめると?」と要点まとめを促す
➅会議当日に回答できないことは、「その他の意見」として残す
⑦事前に当日をシュミレートし、出る意見を想定する
それでは、7つのステップを順番に見ていきましょう。
①事前に会議の議題・目的を書く
まず、会議開催の前に、ホワイトボードに事前に会議の議題と目的を書くようにしましょう。
会議を行うと、どうしても主題から話がずれてしまい、収集がつかなくなる場合があります。
そのような時に、あなたが直接相手の目を見て「話を元に戻してもいいですか?」と言うのは、気が引けませんか?
それよりも、ホワイトボードを見て、「本日の議題は〇〇で、目的は〇〇ということでした。なので、この議題と目的から考えると、どのような意見になりますか?」と言うと、直接誰かを指摘するわけではなく、全体に向かって自然に話を戻すことができます。
議題がずれて収集がつかなることの予防と、話を戻しやすいきっかけ作りのために、事前にホワイトボードには、会議の議題・目的を書くようにしましょう。
➁要点をピックアップし、キーワードを書き出す
板書を行う方で、最も多い悩みというのが、どこからどう意見を書き出せばよいかわからないというところだと思います。
その悩みを解決するには、話の中で「キーワード」になりそうな言葉の発言があった場合に、書き出すクセをつくるということになります。
書き出すキーワードは・・・
形容詞:強い、長いなど
名詞:物の名前
ということになります。
例えば「認知症の早期発見には、自己チェックが必要だ」
という発言があって、これが要点(この人が一番言いたかったこと)だと受け取った場合、書き出すことは
「認知症、早期発見、自己チェック」ということになります。
板書が難しいと感じている人の多くは、「〇〇の、〇〇には」などの接続詞まで、完璧に書き出そうとしてしまいます。
完璧に発言の一つ一つを書き出すなんて、速記をマスターした人でしか行うことはできません。
なので、要点と考えられるキーワードを書き出す、キーワード以外は無理に書こうとしないと、ある意味割り切ることが重要となります。
➂板書の内容が合っているか、確認を行う(合意形成・補足)
会議を進めていく中で、
「言った、言わない」
「そのような意味では言っていない」
というトラブルが起きる場合があります。
そのようなトラブルが起こると、会議の雰囲気が悪くなり、他の発言者も意見を言いにくい状況となり、会議が失敗に向かってしまいます。
そのようなトラブルを未然に防ぐために、話の区切りがついた段階で、板書の内容が合っているのか、確認を行うと良いでしょう。
意見の確認を行うことで、参加者全員の合意形成ができ、同じ方向性で会議を進めていくことができます。
また、再確認することで、その時は思いつかなかった意見や、言い出せなかった意見を発言する機会にもなります。
➃板書を行う際に、キーワードから話が発展する場合は、記号を活用する
板書の内容を確認する際に、キーワードから話が発展し、新たな意見が出た場合には、話の流れがわかるように、記号を活用すると、より分かりやすくなります。
「認知症の早期発見には、自己チェックが必要だ」という意見に対し、
「自己チェックはセンシティブな問題が付きまとう。」
「センシティブとは、どのような意味になりますか?」
「センシティブは、敏感や過敏、傷つきやすいという意味になるんですよ」
「センシティブな問題を解決する方法は何かありますか?」
「それには、自己チェックを行う方が、認知症に対して正しい理解が必要だと思います」
「では、正しい理解を促すには、どのようにすればよいと思いますか?」
「FASTスケールで、認知症の進行の速さを知ってもらうのはどうでしょうか?」
「それなら、我がこととして考え、自己チェックにも積極的になるかもしれません」
「もし、早期発見が出来た場合は、早期に治療が始められるので、進行抑制につながると思います」
このような、話の流れがあった場合、文章にすると、要件をつかみにくく、わかりにくいです。
この話の流れを、記号を活用してみてみると・・・
上記のように要点と話の流れがわかるようになります。
・話の流れ(発展する場合)は、「→」(矢印)
・補足は、「=」(イコール)
・重要なものは、「☆」(星マーク)
最初は、キーワードを書き出して、記号を使うとなると難しく感じると思いますが、数をこなせばこなすほど、コツをつかむことができます。
また、コツを一度つかめば、自転車に乗れるようになったら、その後、ずっと乗り続けられるのと同じように、できるようになります。
いきなり会議で実践するよりも、定期的に所内で会議を行い、板書に慣れましょう。
⑤話が長く、まとまらない参加者には「では、まとめると?」と要点まとめを促す
また、会議を行う際、司会、板書が困ることが、参加者の話が長くてまとまらない発言が続くことが挙げられます。
この場合、取り繕って知ったふりをしたり、要点を解釈してまとめた時に「そういうことを言ったんじゃない!」と言われる場合や、要点をまとめきれないことがあります。
そのような時には、素直に「では、まとめると?」と、最後に要点を発言した本人にまとめてもらうように声掛けを行いましょう。
➅会議当日に回答できないことは、「その他の意見」として残す
また、会議を行う中で、主催者側が答えられないような質問や、すぐに解決することが難しい問題について「なぜしないんだ!!」という意見をもらうこともあります。
その意見が、会議の議題や目的から外れていたとしても、ないがしろにしたり、無視をしてしまってはいけません。
そのような意見は「その他の意見」として、ホワイトボードに記録を残すようにしましょう。
また、その意見を、会議が終わったのちに調べたり、問題解決のための取り組みを行った後、発言を行った方に報告を行うと、その発言をした方は「ちゃんと意見を聞いてくれてて、動いてくれているんだ・・・」と好意的に受け取って頂けると思います。
多くの会議は、会議をすることが目的となっていて、会議で出た意見について、ほったらかしにしていることが多いと思いませんか?
そのような会議が多い中、ちゃんと動いて報告を行うことができれば、参加者の信頼を深め、ネットワークが強くなります。
⑦事前に当日をシュミレートし、出る意見を想定する
最後に、「事前にシュミレートを行い、出る意見を想定する」。
実はこれが一番重要ともいえます。
所内でシュミレーション会議を行うだけでも、実際の会議で出る意見の8割方の意見は出揃うと思います。
また、会議を進めていく上で出てくる質問や疑問も8割方想定することが出来ると思います。
シュミレーション会議の時には、きちんと冷静に意見を言える人にも参加をしてもらいましょう。
そうなると、「別に会議って必要じゃなくない?」と思うかもしれませんが、会議は参加者と情報を共有し、合意形成を行い、自事業所だけでなく、関係機関とネットワークを繋ぎ、ともに課題解決を行うという事も大きな目的となっています。
また、会議を行う前には、自分なりにゴールを見立てて進行を試してみるというものも有効となります。
会議を自分のゴールに向かって強引に進めることは良くはありませんが、会議の見立てを立てるという事はとても重要なことです。
船長が地図もコンパスもなく、航海にでるなんて、乗組員は不安でしかありませんよね。
最後に
今回は、会議・板書・ファシリテーションの基本について解説しました。
今回の記事や動画を作った経緯は、現場で働く中で多くの方が悩み、相談をされた経緯があったからです。
その中で、私が一番の問題と感じたのが「会議の方法をきちんと体系的に学ぶ機会がない」という事です。
多くの事業所が、「先輩の会議を見て学べ」という、令和とは思えないような教育しか行っていない事が、多くの現場の職員を困らせています。
ぜひ、あなたの周りで会議の開催について悩んでいる方がおられたら、今回の記事や動画を教えてあげてください。
コメント